著:キキ 訳:河盛好蔵 (絶版)
仕事の資料として昔の女の人の伝記をよく読みます。
伝記の中でも本人が書いた自伝は、所々美化されていたり端折られていたりする場合があってそれはすでに、本人による「自伝」という仕立てのフィクションなのですが、この作品はその手の自伝のなかでも一番おもしろかった一冊です。
現実を仕立て直したフィクションは、その人物像だけでなく、彼女の生きた時代や場所の空気感も生々しくあぶり出しています。
キキはエコール・ド・パリにおける有名なヌードモデル。個性的な美貌と豊かな肉体と、時代にそぐわない豪快な人柄が、ピカソ、マン・レイ等の名だたる芸術家にウケたらしい。
この本には、写真やキキが描いた絵(画家としてもそこそこ認められた)もたくさん入っています。美貌を武器に、愛されてる実感を求めて攻め続ける生き様が、読んでてすごく気持ちいい、でもすごく悲しい。
この愛されたい病は、勝ち上がる女の王道パターン。自分以上に自分を愛してくれる他者なんかいないということに、死ぬまで気付かない。どこまで行っても満たされず、くるくる回るハムスターみたいにエンドレスで渇望し続ける。(普通はこども時代に親の愛情を受けつつ、親の期待と自分のアイデンティティのバランスの取り方を習得するのだけど、彼女たちにはそういう時期が欠落している。)
恐ろしいことです。
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